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「職業訓練校」のここがすごい!経験者しか知らない3つのメリットをじっくり解説


ハローワークでは求職者にいろいろなサポートを提供してくれますが、その中でも「職業訓練校」はとても有効な転職支援ツールです。

多くの方はその名を聞いたことがあるでしょう。

もちろんすぐに転職をしたいのであれば「再就職手当」を狙うべきです。
しかし、ある程度の余裕があるのであれば「職業訓練校」を経験することをおすすめします。



「職業訓練校」は資格を「安い授業料」で取得できるからでしょ?


たしかにその要素もあると思いますが、私はもう少し別の観点からも職業訓練校をおすすめします。
(ここでは「職業訓練校」は離職者を対象とした「離職者訓練」に限定して話をすすめます)

それは次の3点です。

  1. 経済的メリット:少し手当が加算されることと支給期間が延長される
  2. 時間的メリット:基本手当の支給期間が延長されるから。
  3. 精神的メリット:将来の方向性を考えるよい機会だから。


まずは「職業訓練校の基本」について簡単に触れてから本論に入りますね。

そもそも職業訓練校とはなにか?


そもそも「職業訓練校」ってなに?



職業訓練校とはなにか?

インターネットで検索すれば基本情報がでてきますので詳細はふれませんが、一言でいうと「離職者が受けられる公共職業訓練」のことです。

個人的には「職業訓練校」というのはハローワークの目玉コンテンツと思っています。



20年前から断続的にハローワークに通った経験では「職業訓練校」はハローワークの「3番バッター」的な存在ですね。


4番バッターは何やねん?




なお、一般的には「お金をもらいながら資格がとれるのでお得な制度」として紹介されることが多いです。たしかに職業訓練校のパンフレットをみても「簿記」や「宅建士」「PC関連」など資格に直結する講座が多数を占めます。

それもそのはず「職業訓練校」の最大の狙いは「失業率を下げること」だから。
そのため、雇用に結びつくような実用的なコースを用意しているのが特徴となっています。

ただ、「資格取得」以外にこそ職業訓練校の最大のメリットがあると思うのです。

順番にそのメリットを挙げていきます。

(1)金銭的なメリット:受講手当と通所手当


雇用保険受給資格者(ハロワに登録している失業者)には次のような経済的メリットがあります。

  • 基本手当
  • 受講手当
  • 通所手当(交通費)

「基本手当」は俗にいうところの失業手当です。求職中と同様に基本日額が支給されます。
職業訓練校で勉強しながら安定的に基本手当分はもらえるので、安心して訓練生活に集中することができますね。

次に「受講手当」。
これはケースによって異なりますが、通所1日に500円が支給されることが多いようです。


私の2度の経験をふりかえっても1日につき500円が支給されていました!



ただし、多くの場合、受講手当を受給するためには「最低出席時間」が定められています。
たとえば1日6時間の授業があるとしたら最低でも1日3時間以上は出席しないと受講手当は支給されないなどの制限があるのです。

個人的な経験から言うと、授業時間の50%以上に出席しないとその日の受講手当がもらえないという制限がありました。

ここだけの話。
受講手当をめあてに「午後だけ来る」という受講生もいたりいなかったり、ですね……


モラルハザードの問題なので、厚労省はもう少しインセンティブ設計を考えたほうがいいと思います……


最後に「通所手当」。これは交通費ですね。
経済合理的な交通手段を指定されますので、もっとも安価なルートでの交通費が支給されます。




(2)時間的なメリット:「就活申請の免除」と「期間延長」

時間的にもメリットがあります。
大きくわけて2つありますが、まずは「就活申請の免除」です。

「就活申請の免除」とは?



基本手当を受給するためには原則として、認定日にハローワークで「失業の認定」を行わなければなりません。4週間に1度は指定日時にハローワークに赴かないといけないのです。これがけっこう負担になる人も多いのではないでしょうか。

しかし、職業訓練校に入校すると「失業の認定」のためにハローワークに行かなくてOKとなります。
就職活動の申請が免除になるのです。
職業訓練校での学業に専念するための配慮とおもわれますが、2回以上の就活を申請しなくてもいいので時間的に余裕ができますね。


次に、「期間延長」について図解しながら解説します。ひとつの事例をあげてみましょう。


一般的な基本手当を受給する流れ



まず、一般的に基本手当を受給する「通常フロー」はこちらになります。(前提条件は図にある通りです)

基本手当の通常フロー(待機期間と給付制限期間は支給されない)

この場合、6月21日から9月20日までの90日しか基本手当を受け取ることができません。(この期間を「支給対象期間」といいます)

ところが!
支給対象期間の前後に職業訓練校に入校した場合、このルールが覆されるのです。


【ケース1】「待機期間」や「給付制限期間」に職業訓練校に入校した場合



ここで「給付制限期間」である5月1日に職業訓練校に入校した場合を考えてみましょう。
下図のように「通常のケース」と比較してみました。

【ケース1】給付制限期間中に職業訓練校に入校した場合




このケースでは、失業給付の受取額は(1)+(2)+(3)となります。

つまり、こういうことです。

  • 給付制限期間中であっても訓練校のクラス開始日から基本手当が支給される。→(2)の部分
  • 訓練期間中は受講手当や通所手当も支給される。→(3)の部分


この場合では90日から141日間も基本手当が支給されることになるので、時間的にも経済的にもかなり助かりますね。



【ケース2】「支給対象期間」の終了ギリギリに職業訓練校に入校した場合



もうの1つの事例をみてみましょう。
支給対象期間の終了日手前に職業訓練校に入校したケースです。

【ケース2】支給対象期間の終了間際に職業訓練校に入校した場合




この場合、支給対象期間は9月20日なのですが、9月1日の職業訓練校に入校するとどうなるかを示しました。これをみると、支給対象期間が9月20日ではなく11月30日まで延長されていることがわかります。しかも先ほどの【ケース1】と同じように、訓練期間中は受講手当や通所手当も支給されるのです。


ただし、職業訓練校では「支給残日数」がある程度なければ基本手当を受給できないという厳しいルールがあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

「受給資格者のしおり」にはこのような情報は記載されていませんし、ハローワークの職員さんからも事前に詳細には説明してくれません。
知識として知っておきましょう!



(3)精神的メリット:人生を考え直すチャンスだから

最後に精神的メリットをご紹介します。
ちなみに、個人的にはこれが一番のメリットと思っています。

もし読者さんが失業して転職活動中であれば、おすすめしたい本があります。
LIFE SHIFT」という本です。

数年前にベストセラーになった有名な著書なのでご存知のかたも多いと思います。

この本は「人生100年時代の設計書」としての位置づけとなっており、長期的な視点でキャリアを捉え直すことができます。


人生100年時代にどうキャリアを築くか問題

「LIFE SHIFT」より抜粋


私も転職を繰り返している最中に読み直したことがあるのですが、じつはこの本は失業中に読むべき本だと実感しました。

なぜなら、リアルタイムで「今後のキャリアをどうしようか」を考えることができるから。

今後の展望に関して、本書では次のように述べられています。

問題は1つの分野の専門技能を習得するだけでは、おそらく長い勤労人生を通して生産性を維持できないということだ。しかも新しいテクノロジーが登場するペースの速さを考えれば、どのような専門技能もいずれ時代遅れになる可能性が高い。
そこで、勤労人生の途中で、専門分野を変更しなくてはならないケースが増えるだろう。

「LIFE SHIFT」より引用


失業している期間に「LIFE SHIFT」を再読して、80歳までの人生計画を立ててみたら、めちゃくちゃ精神的に楽になりましたよ!

失業は新しい選択肢を選ぶことができるチャンス。


「職業訓練校」を専門的知識の習得の場として利用することもできますが、むしろ専門分野を増やしたり、これまでとは全く別のジャンルを開拓するという活用法もあると思うのです。

失業している期間を単に「安く資格取得が狙える期間」と考えるのではなく、長期的に人生プランを推考する機会として考えてみてはいかがでしょうか?



失業は新しい選択肢を選ぶことのできる大きなチャンスなのです。

【関連記事】これから職業訓練校のコースを選ぶときの参考にしてみてください!

この記事を書いたのは私です

ケンタ
ケンタ
1級ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士。
【経歴】1977年兵庫県生まれ。一橋大学経済学部卒業後、多種の業界で管理部門をほぼ経験しました!(IT、経理、経営企画、財務、人事、マーケティング)
【得意分野】人生設計やプラン作成、分かりやすく説明したいです。
【趣味】カフェめぐり(日本全国のスタバ旅など)グルメ、ストイックな勉強。