「お金」「法律」「英語」などの教育を考える個人サイト

「ステーブルコインUSDTの将来は大丈夫?」私たちが知るべき3つの問題点


最近、 ポートフォリオの一つとしてステーブルコインの「USDT」を9万円ほど組み入れました。

関連記事:【USDT購入完全マニュアル】Bybit(バイビット)でUSDTを入手したので手順をくわしく解説します



ところが、そのとたんに「UST崩壊」から仮想通貨の大暴落がスタート!



おいおい、USDTは大丈夫だろうか……



そこで今回はUSDTを1週間かけて調査してみました。
結論を簡単に述べるとこうなります。

  • USDTは法定通貨担保型なので無担保型のUSTとは仕組みが異なる。
  • しかし、USDTは次のような問題点があると思う。

    運営の不透明さ
    担保資産の不確実性
    3件の案件が係争中


  • やはり「ポートフォリオ構成」と「リスク管理」が超大事だと改めて知った。



先にあやまっておきますが、私は会計士などの専門職ではないので、もし意見に間違いがあれば指摘いただければ幸いです!


「ステーブルコインやのにめっちゃアンステーブルやん」と皆がツッコミを入れた日

「2022年5月8日」。
おそらくクリプトの歴史に残る日になるでしょう。

ステーブルコインである「UST」が米ドルとのペグが外れてきたことによって、その担保資産である「LUNA」もろとも価格が暴落したのです。

そもそも、ステーブルコインとはドルやトークンなど安定資産にペッグすることで、ボラティリティー(変動幅)を最小化するように設計された暗号通貨です。

一般的に、どの資産にペッグするかで3種類(法定通貨担保型、暗号資産担保型、アルゴリズム連動型)に分類されます。このうち「UST」は「アルゴリズム連動型」に該当します。

簡単にいうと、LUNAというトークンを発行してそれを「裏付け資産」として機能させるのです。


自分で勝手にトークンを作るんですね……
まるで日本銀行やん。


巧みなのがLUNAの発行数量を調整することで需給をコントロールするという仕組みです。
これを「アルゴリズム」と呼んでいます。


自分で貨幣を増発するみたいなかんじですね……
ほぼ日銀やん。



そもそもステーブルコインの存在意義ははどこにあるのでしょうか?
主な役割は「ブロックチェーン技術を用いて価値移転を実現できること」にありますが、これはビットコインやイーサリアムと同じ。

ステーブルコインの最大の利点は、暗号通貨とは違って高いボラティリティーにさらされないことです。
ドルと連動しているため、比較的価格の変動幅が少ないわけですね。

このため「ステーブル」という冠がついているわけですが、、、今回のUST崩壊劇で誰もがこうツッコんだはず。


どこがステーブルやねん





テザー社が抱える3つの問題点

さて気を取り直して、冷静に考えてみましょう。

まず、 客観的な視点から。
会計事務所が出している「INDEPENDENT ACCOUNTANT’S REPORT(保証レポート)」およびTether Operations Limited社(以下「テザー社」)の「Consolidated Reserves Report」を見るとこうあります。

Our findings as of 31 December 2021, at 11:59 PM UTC are:
• Consolidated total assets amount to at least USD 78,675,642,677 which is correctly classified as set out in the CRR.
• Consolidated total liabilities amount to USD 78,538,305,451 of which USD 78,480,852,949relates to digital tokens issued.
• The group’s consolidated assets exceed its consolidated liabilities.
The group’s reserves held for its digital assets issued exceeds the amount required to redeem the digital asset tokens issued.

INDEPENDENT ACCOUNTANT’S REPORT

太字で書かれた箇所を見るとUSDTは完全に保証されているように思えます。
ただ、個人的に不安視している点が3つありますのでそれぞれ検証します。


(問題点1)運営の不透明さ

まず、テザー社の開示内容が少ないということです。

これは前々から言われていたようですね。
Decriptによると以下のような記述もあります。

Tether is famously opaque about its operations, and has repeatedly refused to subject itself to a public audit by a major accounting firm.

Tether did not immediately reply to a request for comment as to why the stablecoin’s backing has changed, or what percentage of the company’s current reserves consist of commercial paper.

https://decrypt.co/100289/tether-has-reduced-commercial-paper-stablecoin-backing-last-6-months-cto

意訳すると、「テザー社は不透明な運営で有名であり、何度か会計監査を拒んできた。また、ステーブルコインの裏づけ資産の変更理由やCPの内訳についてのコメントを差し控えていた。」

たしかに、USDTの裏付け資産についての不透明性、運営状態について何度か違法行為を指摘されていましたが、2021年にはCFTCに罰金を支払い和解に至っています。

参考記事:テザー社とBitfinexが米CFTCと和解 USDTの裏付け資産や取引所の運営巡り


ただ、最近はテザー社も変わってきたようです。
会計事務所を介してディスクロージャーを積極的にすすめるようになりました。

テザー社のサイトの「Transplancy(透明性)」には以下のような説明があります。

All Tether tokens are pegged at 1-to-1 with a matching fiat currency and are backed 100% by Tether’s reserves.The value of our reserves is published daily and updated at least once per day.

https://tether.to/en/transparency/


裏付けになる資産価値については1日に1度は更新して開示します!」と述べています。

確認してみるとたしかに昨日時点の資産状況がアップデートされており、資産額と負債額も明記されています。




深掘りしたいところは多々ありますが、徐々に改善はしている様子はうかがえます。


(問題点2)担保資産の不確実性

テザー社のBSをざっくり見てみると、確かに「資産>負債」となっているので、Backingは機能しそうですよね。



負債のほとんどは発行したトークン(USDT含む)となりますが、資産の内容をみてみると全資産が「現金および現金同等物」というわけではありません。


Tether公式サイトより



これをみると、「Cash&Cash Equivalent」は85.64%。
あとは社債やローンなどとなっています。

「流動性がある資産が85%もあるからいいやん」と思われますが、Bankrun(取り付け騒ぎ)が起きたときにフルで対応できるかどうか、我々投資家も見定めないといけません。

ちなみに、資産状況を見てみると、コマーシャルペーパーの格付けも記載されていました。

この格付けをどう判断するかというのも研究の余地がありますね。




(問題点3)抱えている訴訟がまだ3件もある?

さて、 個人的には先ほどの保証レポートに気になる箇所がありました。
偶発債務としてはまだ認識されていないようですが、係争問題がまだあるようです。

At the reporting date, Tether Holdings Limited is the defendant in three ongoing legal cases, the outcome of which cannot yet be reasonably reliably estimated by management, and any contingent liability has not been accrued.

INDEPENDENT ACCOUNTANT’S REPORT

先述の和解の件だけでなく、まだ3件の訴訟案件が残っているとのこと。

こちらは保証レポートということもあり、まだ引当金として計上する必要がないかもしれないし、見積額も明らかでないため偶発債務としての注記も残さなくてもよいということでしょう。


ただ、係争があるということはともあれ潜在的負債を抱えているということです。
可能性が低いとしても、もし裁判で負けて賠償金や補償金が発生した場合、資産を取り崩すことになるかと思いますが、その場合の「裏付け資産」はどこかにあるのでしょうか?

専門家のかた、教えてください!



「今後、USDTはどうなるのか?」という宿題

それではUSDTは今後どうなるのでしょうか?

先述したように、 テザー社は透明性の改善に努めており、また資産の健全化を急速に図っていることもわかります。
たとえば、2022年3月にテザー社はコマーシャルペーパーの持ち分を減らし、アメリカの国債に切り替えていることが報告されています。


The report disclosed that Tether had decreased its commercial paper holdings – short-term commercial debt – by 17% from December 2021 through March 2022, from $24.2B to $20.1B.

https://thedefiant.io/tether-reduced-commercial-paper-backing/

ただ、言うまでもないですが、多くの資産をステーブルコインで保有することはおすすめできません。DeFiでステーキングや流動性プールの提供により高い利回りを得ることができますが、相当のリスク管理知識が必要となります。

また、 ステーブルコインの序列にも注意をする必要が出てきました。

Decryptのサイトには「USTが崩壊した後、USDTも低迷しUSDCの一人勝ちになっている」という記事もあります。


As UST was headed for zero and USDT (Tether) was processing billions in redemptions, USDC was padding its market cap. At the start of the crash on May 8, USD Coin had a market capitalization between $48 billion and $49 billion.

https://decrypt.co/100812/big-winner-crypto-crash-usdc-stablecoin

今日時点(2022年5月22日)の ステーブルコインの時価総額及び流通量を見てみると、確かにUSDCは急伸しており、USDTの時価総額は下がっていることがわかります。

CoinGeckoより




USTは時価総額トップ10に入るほどの価値を持っておりましたが、ドルのペグが外れると瞬殺されました。USDTのペグも瞬間的にではありますが外れてしまい、騒然となりました。

今後のことは誰にもわかりません。

ここにきて、世の中には絶対と言うものはないと思い知りました。
ステーブルコインの情報も流動的なのでいち早くアップデートする必要があります。

そして何よりも「ポートフォリオ戦略を早急に練りなおすこと」これこそが今の我々に課された宿題なのかもしれません。



この記事を書いたのは私です

ケンタ
ケンタ
1級ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士。
【経歴】1977年兵庫県生まれ。一橋大学経済学部卒業後、多種の業界で管理部門をほぼ経験しました!(IT、経理、経営企画、財務、人事、マーケティング)
【得意分野】人生設計やプラン作成、分かりやすく説明したいです。
【趣味】カフェめぐり(日本全国のスタバ旅など)グルメ、ストイックな勉強。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です