先日、「ホワイトスペース」という本を読みました。
この本の冒頭にこうあります。
私たちの仕事と人生には何かが欠けている。それは取り戻すことができる。
私は火の熾し方を知らない子供だった。
マンハッタンで育つのに必須のスキルではないから。
〜略〜その後の人生でも、相変わらず火の熾し方はわからないままだった。
ビーチで焚き火をした時や、アウトドア好きの彼氏とキャンプに行った時に何度か真似ごとはしたけれど、実際の技術まではマスターできなかった。
なぜいきなり「火の熾し方」なんだ?
と思ったのですが、読み進めるとわかりました。
火をつけるにはコツがいります。
隙間なくきっちりと燃料を積み上げても火はおこせないのです。
火を起こすためには可燃物の間に空間が必要なのですね。
この「火を起こすために必要な少しのスペース」こそが「ホワイトスペース」なのです。
なんと素晴らしい比喩!
「ホワイトスペース」と聞くと、瞑想やメディテーションと思われがちですが、少し違うようです。
ホワイトスペースとは「戦略的な小休止」です。
たとえばメモ帳に1時間ほど思いつくまま書いたり、1つの作業を行って別の作業を始めるまでに切り替えるために少しぼーっとしたり、考えにふける時間をとったりなど。
ホワイトスペースによって思考や休息や創造のための時間を生み出すことができるのです。
そう聞けば、ホワイトスペースを取得するのは難しそうですよね。
しかし、極端なことを言えば瞑想のように「無」になる必要もないし、目的がなくてもいいのです。
ただぼーっとしているだけでOK。
これを示す事例が面白かったので紹介します。
忙しくて思考回路がショートし始めたら、非常用ウェッジのボタンを押そうという趣旨で以下のようにありました。
周りの人間とテクノロジーの一切から自分を切り離し、つかの間ぬいぐるみになる。
ぴくりとも動かず、ただ座って宙を見ながらぼーっとする。
そして気が済んだらゆっくりと自分自身に戻りまた動き出そう。
ぬいぐるみのようにボーとするだけでいいのです。
ぬいぐるみは好きなので、ぬいぐるみにもなろう。
とくに衝撃的だったのはつぎの内容です。
ニューヨークタイムズの平日1日の紙面には17世紀の人が一生かけても得られなかったであろう量の情報が詰まっている。(中略)
2010年にレクシスネクシスが調査したところ、人々は勤務時間の半分以上ーつまりは本来の仕事をする時間以上ーを情報の取得や管理に費やしていることが明らかになった。
そりゃパンクするわ。
自分も1日にどれくらいの量の情報をインプットしているかを振り返ると、自分の脳力のキャパシティーを超えているかもと思いました。詰め込みかも。
情報の取り方を再考しようと痛切に思ったのです。
私がこの本を読んで、実行しようと思った事は次の5つです。
①スマホのメールチェックを1日5回に制限する
②何かを達成したら立ち止まって自分でお祝いする。
③1週間に1度30分「不安とアポ」を取って、手帳に不安材料を書き出す。
④即断(反射的な反応)をやめる。
⑤辛かったらぬいぐるみになる。
でも……私は自分を信じていません。
これらは長続きしないかもしれない。
①のスマホ制限についても、何度もスマホ断ちをトライしては挫折していますし。
スマホ捨てたい……
②の「達成したら立ち止まる」のも苦手。
本書を読んで、何かを終えたらいったん小休止をとり自分を褒める時間を自分に与えるべきだと思ったのです。
いつも目標達成してはまた新しい目標に向かってすぐに走り出ちがち。
きみはなんのためにがんばってるんだ?
そう。そうやねん。
何かを成し遂げたとき、すぐに次の目標に進むのではなく、立ち止まってお祝いしよう。
そして、俯瞰して自分を見てみよう。
ただ、ホワイトスペースを義務や強制ととらえるのでなく、ホワイトスペースを獲得するための旅と考えようと思います。そんなに堅苦しく考えずにかるい旅だと思ったらいいのです。
挫折してもいいし、立ち止まることに失敗して立ち止まれなくてもいいし。
ま、いいや。と。
ちなみに、エピローグで「火の熾し方」についてこんなエピソードがありました。
この本を書いている間、夫と私は3人の息子たちを連れて「ワールドスクーリング」をしていた。
ワールドスクーリングとは、旅を通じて子供の生きる力を養おうというユニークな教育法だ。
〜中略〜火を燃え立たせるというテーマはどこにでもついてきた。
バリ島の結婚式では、様々なものが描かれて煙がもうもうと上がり、目が見えなくなったと思った。
ニュージーランドの農場では羊たちが元気に跳ね上がるのを眺めながら書斎を温める薪ストーブの番をした。
また、タイではピエールというフランス人植物学者とその娘たちが所有する質素なバンガローに滞在した。私たちは大晦日を一緒に過ごし、燃え盛るかがり火とサイリウムとパイナップルケーキで新年をお祝いした。もうそろそろお開きの時間かなと思ったころ、8歳のルナが私の手をつかんでいった。
「寝る前に火のまわりで踊らない?」
このエピローグを読んで、いろいろと考えたことはあるのですが、まっさきに思ったことは一つ。
「火の熾し方を、知りたい。」
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