最近、「103万円の壁」という言葉が流行してますね。
国民民主党が178万円のラインを絶対に譲らないけど、この問題は難しいですよね。
所得税や住民税が減るのはわれわれにとってはいいのですが、その分どこかしらでしわ寄せが絶対に来るはずだし。
本年度の補正予算の額もかなりですし。
国債発行も限界があるので、結局どこかで増税することは目に見えています。
ま、それはともかく、扶養控除に関する質問が多くなってきました。
わたし、FP1級として家計相談も受け付けています!
さて、今回はあるシングルマザーさんのお悩みについて一緒に考えてみましょう。
大学生の息子と高校生の娘がいて、「アルバイトで103万円以上稼ぎたい!」と言っています。そうなると扶養が外れてしまうので、どうすればおトクでしょうか?
「103万円の壁を超えて子供が働きたい」とのこと。
そして、FP1級のわたしの結論は、こうなります。
扶養控除を考えると103万円以上のバイトはやめておくべきですね!
ごく普通の結論やがな!
それは面目ない……。
ただ、そこまでに至るプロセスがとても重要です!
今回はその経緯を交えながら、扶養控除についての理解を深めていきましょう!
まず扶養についての基礎知識から。
「扶養」と一言で言っても、2つの基準があります。
「税法上の扶養(所得税・住民税)」と 「社会保険上の扶養(健康保険や厚生年金など)」の 2つです。
まず、子供が103万円を超える収入を得ると、「扶養親族」として認められなくなります。
そうなると「扶養控除」という所得控除が認められないため、親の所得税や住民税の控除が減少します。
そもそも「控除」ってなに??
そう!
「控除」という言葉にアレルギーを持っている人が多いので、ここではなるべくシンプルに考えましょう。控除控除が増えれば増えるほど、税金が少なくなるものです。
もっと知りたい方は、こちらの記事もお読みいただければと思います!
参考記事:【図解】税金初心者のための確定申告基礎講座(その1)「控除とは一体なんなのか?」
つまり、扶養控除がなくなったら控除が減る。
その結果、親の税負担が増えることになる。
さらに年収が130万円を超えると、子供自身が社会保険(健康保険・年金)の加入対象となります。
そうなると、社会保険料の支払い義務が生じてしまうのです。
(ただし、「130万円」という数字は社員数によって異なります。)
じつはこっちの方が負担が重かったりする。
つぎに、子供が扶養を超えて働くメリットデメリットを整理してみます。
①収入増加
自分で学費や生活費を賄えるだけの収入を得られ、経済的に楽になります。
②経験値の向上
働く時間が増えることで、社会経験やスキルアップの機会が増えます。
①母親の税負担軽減
扶養控除が継続されるため、母親の税負担を抑えられます。
②社会保険料の負担回避
子供の社会保険加入を避けられるため(130万円の壁)、収入を最低限確保できる。
③学業への影響を最小限にできる
働く時間が限られるため、勉強時間を確保しやすい。
まずここまでが一般的な見解となります。
正直に言うと、これらはChatGPTが解答したものです。
うん、これはChatGPTの言う通りだわ。
そして、ChatGPTは以下のような結論を出しています。
(3)結論:扶養内・扶養外のどちらが良いか?
①息子(大学3年) 大学3年生であるため、卒業後の就職活動や学業に集中できるよう、扶養内(年収103万円以下)にとどまる方が賢明かもしれません。ただし、短期間に多く稼げるアルバイト(夏休みや冬休み中など)を検討することで、学業を優先しつつ収入を増やすこともできそうです。
②娘(高校1年) 高校生の本業は学業であるため、扶養内で働くのが基本的にはおすすめです。 学費や遊び、携帯代を自分で賄うという姿勢は立派ですが、学業に影響が出ないよう、勤務時間の調整をするのが重要です。
うーん。
通りいっぺんの回答になっているので、私の方でも考えてみました。
まず、事例のシミュレーションしてみました。
前提条件は以下の通りです。
【前提条件】
健康保険料率:約10%(全国健康保険協会の平均料率、介護保険料を含む)。
介護保険料部分:約1.64%(健康保険料に含まれる分)。
厚生年金保険料率:約18.3%(折半後は9.15%)。
雇用保険料率:約0.6%。 社会保険料合計:約20.35%(介護保険料を含む)。
住民税:標準的な税率(所得割10%、均等割5,000円)。
所得税率:課税所得195万円以下の場合5%。
住民税:課税所得の10%(所得割)+均等割5,000円。
母親の給与年収:533万円。
扶養内と扶養以上を比較するため、具体的な収入を考えてみます。
バイトを100万円でおさえた場合と180万円(月150,000円のアルバイト料を仮定)稼ぐ場合を仮定しましょう。
Excelで子供と母親の税金インパクトを検討してみました。
まず、子供の税負担の比較です。
左側が「扶養あり」パターン、右側が「扶養なし」パターンです。
そして、上段が「課税所得の計算」、下段が「税金と社保の計算」になります。
もしバイト代を180万円稼ぐと、扶養が外れてしまい、税金・社会保険料の負担が発生してしまいます。その額、なんと約38万円!
次に母親の税金インパクトを見てみましょう。
母親に関しては、扶養控除やひとり親控除が外れてしまうため、ざっくり年に約27万円の税金・社会保険料負担が増えることになります。
結果として、1人の子供が扶養から外れてしまうと、38万円(子供)+27万円(母親)=約65万円の税負担が増えることになります。
これだと何のためにアルバイトを増やしているのかが分からなくなってしまいますよね。
もし子供二人が扶養が外れてしまうと、100万円以上の負担増となってしまう!!
もちろん、税金対策をすれば、ある程度の出費を防げるかもしれませんが、やはり税負担が大きくなるのは大問題。
こう考えると、103万円の壁ってめちゃくちゃ大きいことがわかりますね。
103万円を超えると、税金と社会保険料の負担が大きくなるので、給与を103万円以内に収めたいというインセンティブが働くのは超合理的!
だって、65万円分も働かないとペイしないもんね。
税金を払うためだけに働いてるような……。
ちなみに、本ケースでは所得控除という観点から、次の2つの対策・確認をしておきましょう。
①「ひとり親控除」をきちんと年末調整で申告しているか?
②もし両親に資金的援助(仕送り等)をしていて、扶養に相当する状況にあれば、「老人扶養控除」も検討してみる。
完全な余談ですが。
「103万円の壁」は、思うに、「所得控除」という言葉を使いたくないがための言葉だと思っています。
完全に一人歩きしてしまっている感があるので、論点がずれてる気が……。
国民もマスコミも「基礎控除の48万円」と「給与所得控除の55万円」を分けて考えなければならないと思います。
(注意)
ファイナンシャルプランナーは具体的な税金相談や税務申告等はできないため、今回は一般的なケースでシミュレーションしました。申告や具体的な相談は税理士にご相談しましょう!
ココナラで個人コンサルをしたり、電子書籍を書いたりしています。
Kindleでは、「FP問題集」や「宅建士の作図テキスト」「スリランカへのアーユルヴェーダ旅行記」、「睡眠薬の断薬ストーリー」などを出版中。
くわしくはこちらをごらんください!