ビクビクしながらこの記事を書いています。
昨今「ハラスメント」「法令遵守」「コンプライアンス」というワードが叫ばれ、なにが正解なのかが分からなくなってきたのは私だけでしょうか?
ちょっと何かを発言すると「〇〇ハラ」と抑止されたり、不文律の倫理道徳に背いた行動すると容赦なく叩かれますよね。
全然関係ないですが、フジテレビの一環の報道も見ていられませんでした。
「あらゆる不正を取り締まる!」
みんなが目を凝らして、SNSやメディアで世の不祥事を監視しています。
理想の社会かもしれませんが、少なくとも私はそんな「衆人環視社会」が生きにくい。
そこで、最近読んだ「タブートラック」という小説に共感することがめちゃあったわけです。
主人公である俳優「橘響梧」は「タブートラック」と呼ばれるトラックを所有しています。
そのトラックの中で、日頃から抑制されている放送禁止用語を叫ぶことでうさ晴らしをするのです。
スマートフォンと無線接続したサウンドスピーカーから音楽を流すと、缶を手に突っ立ったまま、衝動的に息を大きくする。「気違いだー!」われんばかりの大声で叫んだ。
首に青筋が立つのを自覚しつつ、防音性を高めた車内でもわずかに反響する自らの声に刺激されるように、響梧は続けざまに口を開く。
「Fuck!」息を全部吐き切り屈んだ状態になっていて、吸気と同時に上体を起こしざま、車内後部を向き、「妻じゃなくて嫁!」口から出任せのまま叫ぶ。
橘だけでなく、すべての登場人物が社会のルールや倫理にがんじがらめになっている様子が描かれています。
生きづらい世の中だね……
また、SNSで他者を攻撃する人を「自分自身の生活とは関係ないことに首を突っ込み、こき下ろしたりするために労力を割けてしまう人種。」と本書で表現しています。
気づけば自分もこのような人種になりそうで怖い。
この小説では、前半と後半に分かれています。
後半パートでは、北海道がロシアに侵攻されるリアルな未来予想図が描かれています。
未来図では、今の行き過ぎた衆人環視が和らいでいる様子も見られます。
人の命にかかわったり、誰かの人権を侵害することでなければ、過度に干渉すべきではないというふうになってきた、ロシアによる北海道侵攻後の価値観からすると、些事としか思えないようなことに橘たちが脅えていたことがわかる。
刑事事件にならないのであれば、他人の私生活にああだこうだ口出しするのは下品な暇人のすることとされ、見下される傾向にあるし、死に至りそうなPTSDや鬱状態から遠ざけるためであれば、一部のドラックの使用は許容されている実情がある。
そんな未来になるといいですね。
他人の生活や人生に関与する時間があるなら、自分の人生に集中するべき。
余談ですが、最近小説で自分の境遇と照らし合わせることが多いのです。
本作では「中松優一」に私の関心が持っていかれました。
優一はかつて神童と呼ばれた天才肌の人間。
数学オリンピックで優秀な成績を収め、東京大学を卒業し、大手商社に入社。
しかし、15年目に体調を崩し、退職してから転落人生が始まってしまいます。
人材派遣で数年働くも、周囲との衝突で心身をダメにし、英会話教室の事務営業に落ち着きます。
しかし、上司からの強烈なパワハラに苦しめられ、SNSなどで誹謗中傷を趣味としてストレスを発散させる日々を送っています。
勉学の世界の外側へ飛び出した途端、自分の秀でた能力を社会が認めて来れなくなった。根回し周到だったり、声の大きさだけが取り柄であるような連中との人間関係に負けたりし続け、いつの間にか転がり落ちていた。
数ヶ月に1度あったりするような友人すら、いまや1人もいない。ただ、人生経験を重ね、達観できてきた部分もあると優一は自負していた。なまじ未来を見ようとしすぎるとろくなことにならない。幾度か深刻な心身の不調に襲われたこの身体だとあと20年数年くらいだろうか。その場しのぎの心地よさを見つけ消化してゆく、その連続でどうにかしのげばいい。
私と境遇がとても似通っています……。
40代を過ぎると、「ミッドエイジクライシス」と言われるように、これまでの人生を考え直します。
私もそうなのですが、この年齢の男性は独特の孤独感があるのですよ。
関連記事:ミッドエイジクライシス(中年の危機)に陥りそうな人へのオススメ本「家族解散まで1千キロメートル」
「多様性はどんどんすすんでいく」と言われる割に、どんどん画一的な社会になっていくという矛盾は多くの人が感じるのではないでしょうか。
トランプ大統領も多様性推進を撤廃し始めましたしね。
これから画一的なつまらない社会が待ち受けているのでしょうか。
この小説の最後に至極もっともな文章がありました。
しかし赤の意味は青の意味に変わるかもしれないし、世の中は常にそうであった。
大事なのは、今を生き延びるためには何に従い、何を守るのかということだ。すべてのルールは、人々がまともに生きられるようにするためにあるべきなのだから。
すべてのルールはそれ自身を遵守するためにあるのではなく、人々が快適に自分らしい生活をするために存在するはず。
規律や法の目的が何であるかをもう一度再確認するべき時かもですね。
ちなみに羽田圭介さんの小説は具体的な描写が多いところが面白い!
私の一番のお気に入りは「メタモルフォシス」なのですが、そのほかにも過去に書評を書いていました。
関連記事:FIREを目指す前に読むべき小説。羽田圭介の「Phantom」
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