今週は「八月の母」という小説を読みました。
この小説は、母と娘の負の連鎖ということが主題になっていますが、もう一つのテーマとして感じたのは「勉強の意義」です。
主人公の周囲にいるキャラクターたちが不平等な立場からそして愛媛という田舎のなかでの泥沼環境からどうやって脱出するか、その手段のひとつが「勉強」なのです。
登場人物の一人、エリカの学校教師である和幸は次のように語ります。
父はよく平等な社会システムについて嘆いていたが、少なくとも勉強だけはこの国の人間に等しく与えられた脱出の手段だという確信が和幸にはあった。
だからたとえ陰で「ガリ勉」と揶揄されようともひたすら勉強した。
その甲斐あって高校は松山市内の進学校に合格した。
また、私がとくに印象に残った登場人物は絋子の兄「恭介」です。
彼もやはり勉強を通じて現状脱却を試みます。
「勉強する人は、とりあえずこの不平等な社会で持つことを許された数少ない武器やけん。
下手したら唯一の武器かも知れんぞ」
そして次のように続けます。
「もちろん対等に与えられるものとはおもっとらん。俺らみたいに小学生の頃から塾に生かしてもらえる子供もいれば勉強なんてせんでって親から言われよったやつも実際におったし。
でもな、それと自分から放棄することっていうのは全然違うと思うんよ。
自分のいる環境を呪うんやったら、勉強して、まずそこから這い出す努力をしてからいえよって俺は思う。
勉強して力をつけた人間が活躍できるフェアネスは、まだギリギリこの国にもあるやろ」
思いおこせばわたしもそうでした。
学生時代に猛勉強していたのは、田舎の地方都市から東京へと脱出するためでした。
(東京進出した模様は前回の書評でも書きましたが、辛辣なものになりましたけど……)
参考記事:書評「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」〜東京タワーを「東京砂上楼閣赤焔」と呼びたい
そして今、英語学習を継続しているのは海外脱出するオプションを持つためでもあります。
勉強することは誰しもに与えられた平等な武器なのです。
この小説のメインメッセージは「自分の人生は自分でしか生きられない」ということにあります。
たとえ親であっても自分の人生を介在させてはいけません。
この意味で、登場人物のエリカは格好の反面教師になっています。
自分の境遇を母親や環境のせいにして、最後には罪を背負ってしまう。
たとえ年齢を積み重ねていても、いや、年齢を重ねたからこそ次のシンプルなことに改めて気づかないといけません。
改めて人生を顧みた今週の読書でした。
最後にエピローグから、この言葉で締めくくります。
「あなたの人生はあなただけのものやから。
それだけは誰にも触れさせんといて」
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