行政書士の過去問を解いていて「ちょっとわからない……」となった問題がありました。
この問題です。
1)行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合に審査請求を行ったときは、法律に再調査の請求ができる旨の規定がある場合でも、審査請求人は、当該処分について再調査の請求を行うことができない。
令和3年度問題15より
なんとなく「○」っぽいし実際に「○」なのですが、感覚で解いてはダメです。
何となくわかった気になっていましたが、解説を見てもちんぷんかんぷんだったので1日かけて考えてみました。
再調査の請求をマスターしよう!
結論から言うと再調査の請求ができるのは以下のパターンAだけです。
【パターンA】
①〜③までの流れはこんな感じです。
ここからスタートです。
行政庁から処分されたけど、これに対して不服があります。
そこで申請者が「審査請求」か「再調査の請求をしよう!」というところから始まります。
そして再調査の請求をするためには以下の条件が必要となります。
・上級庁などに審査請求できる場合
・法律に定めがあるとき
この2つの条件が超重要!
②の要件を満たせば再調査の請求ができる!
ずばり、再調査の請求が認められているのはこのケースだけ。
もう少し掘り下げましょう。
「再調査の請求」を理解するために、行政不服審査法の条文をじっくり読み込んでみましょう。
具体的にはこのような条文です。
(再調査の請求)
第五条 行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。ただし、当該処分について第二条の規定により審査請求をしたときは、この限りでない。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426AC0000000068
この条文を丁寧に読めば「再調査の請求とは何か」という根本が理解できます。
まず5条の1をつぎの①と②に分解してみます。
①行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、
②法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、
↓
当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。
上の①と②の両方の要件を満たした時にだけ再調査の請求が可能になるのです。
それぞれ見てみましょう。
これは行政不服審査法の「第4条の2〜4」に該当する場合になります。
行政不服審査法の第4条に戻ってみましょう。
(審査請求をすべき行政庁)
第四条 審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める行政庁に対してするものとする。
一 処分庁等(処分をした行政庁(以下「処分庁」という。)又は不作為に係る行政庁(以下「不作為庁」という。)をいう。以下同じ。)に上級行政庁がない場合又は処分庁等が主任の大臣若しくは宮内庁長官若しくは内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する庁の長である場合 当該処分庁等
二 宮内庁長官又は内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項に規定する庁の長が処分庁等の上級行政庁である場合 宮内庁長官又は当該庁の長
三 主任の大臣が処分庁等の上級行政庁である場合(前二号に掲げる場合を除く。) 当該主任の大臣
四 前三号に掲げる場合以外の場合 当該処分庁等の最上級行政庁
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426AC0000000068
第4条の一は「処分庁」に対して、二から四に関しては「処分庁のボス」に対して審査請求をすることができます。
処分庁のボスがいない場合は、処分庁本人に対して審査請求をしなければなりません(4条の一)。
審査請求も再調査請求も第三者がでてこないので、処分した人に「もう一回調べてよ」とお願いすることになります。
「審査請求=再調査請求」となっていまい、再調査の請求はほぼ意味ないですね。
これも重要な要件です。
再審査請求もそうですが、法律に定めがないと再調査の請求はできません。
つぎに行政不服審査法5条のただし書きを見てみましょう。
「この限りでない。」 というのは再調査の請求ができないことを意味します。
この「ただし書き」を請求先に応じて2つに分けましょう。
処分庁に審査請求をしたときです。
【パターンB】
上を見ればわかりますが、審査請求をした時に何らかの裁決が出るはずで、この場合に処分庁本人に「もう一度処分を調べてよ」と言ってもあまり意味がないことになります。
処分庁からすれば「審査請求をしたなら裁決を待てよ。」と言いたいですよね。
次に処分庁以外の行政庁に審査請求をした時です。
【パターンC】
パターンAとの違いはどこかお分かりでしょうか?
パターンAは「審査請求ができる場合」とあり、パターンCは「審査請求をしたとき」とあります。
つまり、審査庁である上級庁からすれば「ボスに審査請求したならボスの審査を待てよ」と言いたいですよね。
要するに「 再調査の請求」は審査請求後にはできないのです。
もうひとつ、5条の2も見てみましょう。
(再調査の請求)
第五条
2 前項本文の規定により再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定を経た後でなければ、審査請求をすることができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 当該処分につき再調査の請求をした日(第六十一条において読み替えて準用する第二十三条の規定により不備を補正すべきことを命じられた場合にあっては、当該不備を補正した日)の翌日から起算して三月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
二 その他再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426AC0000000068
ざっくり言うとこんな感じです。
再審査請求を受けた処分庁からすれば「再調査の請求をしたのであれば決定するまで待とうよ!」といいたいですよね。だから、審査請求する際は再調査の請求の決定を受けてからにしましょうということです。
再調査の請求について、まとめるとこうなります。
シナリオ番号 | 想定されるシナリオ | できるか? |
---|---|---|
シナリオ1 | 審査請求(すべて)→再調査の請求(処分庁へ) | NG |
シナリオ2 | 再調査の請求(処分庁へ)の決定前→審査請求 | NG |
シナリオ3 | 再調査の請求のみ(処分庁へ) | OK |
シナリオ4 | 再調査の請求(処分庁へ)の決定後→審査請求(上級庁などへ) | OK |
これを踏まえてもう一度冒頭の問題を見てみましょう。
1)行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合に審査請求を行ったときは、法律に再調査の請求ができる旨の規定がある場合でも、審査請求人は、当該処分について再調査の請求を行うことができない。
令和3年問15より
すでに「審査請求を行った」とあるので、上の表のシナリオ1に該当しますね。
したがって、再調査の請求を行うことができないので、この選択肢は◯となるのです。
再調査の請求についてはこのような問題も出題されています。
行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に審査請求をすることができる場合には、行政不服審査法の定める例外を除き、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。
令和4年度問題14より
もう一度上のパターンAを見てみましょう。
再調査の請求をするためには次の2要件が必要でしたね。
①行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、
②法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるとき
問題文には「行政不服審査法の定める例外を除き」と、あたかも原則的にできるような文章になっています。
しかし、再調査の請求は法律に定めがなければできないのです。
そもそも再調査の請求というのは例外的なケースということに留意が必要です。
ということでこの選択肢は✖︎となります。
2年連続で再調査の請求が出題されていますので、このトピックは用心しないといけません。
来年はそろそろ「再審査請求」が来そうですが、ヤマははらずに。
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