ここ最近コロナ渦ということで家にひきこもって、本を片っ端から再読しています。
先行きが見えず不安ですが、ストレスを最小限にしながらやりすごしていきましょう。
そんななか愛読書の一つ「闇金ウシジマくん」を全巻読みなおしているところなのですが、「闇金ウシジマくん(7巻)」から始まる「フリーターくん」のシリーズは今こそ読むべきです。
主人公は宇津井優一という35歳のフリーター。
肉体労働で日銭を稼ぎパチスロで浪費する生活を続けていたため、消費者金融から60万円の借金をして月に5万円の利息を返済するという絶望的な人生。
もちろん元本は一切減りません。ああ、無惨。
これだけではありません。
もっと深刻なのは優一の母親なんです。
母親も消費者金融に60万円の借金をしていて、なおかつ株式の信用取引で120万円の追証が発生。
そこで、ウシジマくんの「カウカウファイナンス」に20万円の借金(10日5割という高利)をしたのを機に、目も当てられないような方向に事態は発展してしまいます。
親子ともども借金の泥沼にはまってしまい、8巻になるともう絶望の深淵を見てしまうことになります。
9巻に入ると事態がエスカレートしすぎて「もうやめてくれ」と叫びたくなります。
結論から言うと、宇津井家は自宅も実家も奪われてしまい、財産という財産をすべて失ってしまうのです。
これだけ見るともう読むだけでブルーになってしまいますよね。
しかし!
ただ、9巻を読み終わった後に不思議な読後感を持てるんですよ。
一つの希望を見いだせるからです。
それなのに、このシリーズはウシジマくん史上最高といえるほどハッピーエンドで結ばれています。
その理由としては、優一が人間的にめちゃくちゃ成長するからです。
優一はもう貧困につぐ貧困のスパイラルに陥ってしまい、最終的にはホームレスに転落してしまいます。
しかもホームレスの厳しい序列世界もなじむことができず、完全なる孤立状態となってしまうのです。
その後、優一は家族との再生をとりもどすのですが、そのキッカケとなったのはたった一つのアクションでした。
父親に「今まですみませんでした」と謝罪したのです。
今まで高いプライドが邪魔をしていたのですが、このひとことで事態は一転します。
優一は介護職にありつき、月に6万円もの借金を返済しながらもう一度家族で生活するようになるのです。
もちろん高給ではありません。介護の仕事は手取り11万円。
それでは足りないので週1日夜勤でパン工場で働いています。これが月に3万3600円。
合計14万円にすぎません。
このリアリティのある金額が私の心に刺さっています。
個人的な話になりますが、私はロストジェネレーションの世代であり、裕福な人生をあきらめざるをえませんでした。
糊口をしのぐためにAmazonの倉庫で延々とベルトコンベアに荷物を詰め込む仕事をしましたし、年収170万円のため一日の生活費を3桁におさえようという日々が続いたこともあります。
そんな生活を抜け出すためには、まずプライドを捨てることが重要。
そして人と比べない。比較しないこと。
ここ最近、私はこの初心に戻る姿勢を忘れていました。
まさに、この「フリーターくん」を読んでもう一度自分の身を振り返ることができたのです。
最後に宇津井優一が残した一言を。
人生の落とし穴がそこらじゅうにあいている。ちょっとした穴に見えても、実際、深すぎて一度落ちたら上がれない。
「闇金ウシジマくん(7巻)」
でも本当は……誰かが手を差し延べてくれたら簡単に這い上がれる程度の穴かもしれない。
これから世界が分断されることが予想されます。
家族がどうあるべきか、個人の幸福感をどう定義すればいいのか。
「ウシジマくん」を読みながら考えにふけってみてはいかがでしょうか?