今回は「マネー・ボール」という本をご紹介します!
「マネーボール」はその名の通り「野球」についてのストーリーなのですが、社会人としてのレッスンが盛りだくさんなのです。
この本は一言でいうと、「野球」で勝つためにどのように「数学」を利用して戦略を策定するかをつきつめる内容。
たとえばこのような例題があります。
「あなたは4000万ドル持っていて、プロ選手を25人雇おうとしています。
一方、あなたの敵は、すでに1億2600万ドル投資して25人の選手を雇っており、あとさらに1億ドルのゆとりを残しています。
「マネー・ボール」より
さて、あなたがこの敵と戦って、みっともない負け方をせずに済ますためには、手元の4000万ドルをどのように使えばいいですか?」
いかがでしょうか?
これ、MBAのファイナンスで出題されそうな問題ですよね。
この問題解決を試みた人間こそが、弱小貧乏球団(オークランドアスレチックス)を救うことになるビリー・ビーンなのです。
このストーリーの概要は検索すればご覧になれますので省略します。
ただ、私が本当にすごいと思ったのは従来の野球の評価方法を見事に覆した点にあります。
たとえば、四球への評価です。
四球について、本書ではこう描かれています。
足の速さ、守備のうまさ、身体能力の高さは、とかく過大評価されがちだ。
「マネー・ボール」より
しかし、野球選手として、大事な要素の中には、非常に注目すべきものとそうでないものがある。
ストライクゾーンをコントロールできる能力こそが、実は、将来成功する可能性と最もつながりが深い。そして、ストライクゾーンをあやつる術を身につけているかどうか、一番分かりやすい指標が四球の数なのだ。
野球のルールでは、四球は打数に含まれないので打率には直結しません。
言い換えると「バッターボックスにすら入っていない」状態と同じなのです。
しかし、四球の本当にすごいところは「ストライクゾーンをコントロールできる能力」にこそにあると言うのです。
ファンからすれば「四球の数」はさほど重視されていないように思えますが、実は重要な指標となりうるのですね。
何を評価指標とするかは、よくよく吟味しないといけないのです。
さらに、ビリーは野球選手としてなかなか定量化できないポイントも評価対象としています。
ビリーの目からみて、レニー(打者)の長所は明らかだった。
どんな場面になっても動じないことだ。
プロ選手としてやっていく上では、ある意味、肉体面より精神面がものをいう。頭部からそう遠くない位置へ160kmの速球を投げ込まれて、それを自信満々で打ち返すためには、よほど神経が図太くなくてはならない。
「精神面でいうと、レニーは野球にうってつけだった」とビリーは話す。
「あらゆる失敗を即座に忘れることができ、あらゆる成功を糧にすることができた。失敗という概念を持っていないんだ。」
「マネー・ボール」より
ここの「失敗を即座に忘れて、成功を糧にする」マインドの持ち方は、野球選手だけでなくビジネスパーソンとしても必須だと思います。
「即座に」がポイントです。
失敗を「即座に」忘れることはなかなか難しいものです。
しかし、僕もいろんな人生経験を経て「あー、失敗したわ。さ、次いこ」と思えるようになるのは大事だと実感しています。
そういう意味でこの本は「会社員2年目の教科書」として読んで欲しいです。
社会人になると、基本的に誰もほめてくれません。
上司に褒められる機会はめったにありません。私もそうでした。
かつて底辺サラリーマンだった私は、会社の「評価基準」の上では常に最低ランクをさまよっていました。
その理由を本書でみつけました。
ここで大きな疑問が生じる。チャドのようにうまくゴロを打たせる投手がなぜメジャーに昇格しないのか?答えはいたって簡単だった。チャド・ブラッドフォードのようなタイプの投手は前例がないからである。
ゴロを打たせる投手と一口に言っても、オーバースローの投手であれば、シンカーを決め球にする投手であることが多く、たいていコントロールに不安がある上、三振をあまりたくさんとれない。
ブラッドフォードは、人間的にもデータ的にも、普通とは違うのだ。
「マネー・ボール」より
会社の評価というのは、「いかに従順な会社員か」だけが基準となります。
そこに、前例がないような革新的なシステムを導入しても評価されないのです。
なぜなら上司自身が「評価できない」からです。
今後は管理職の役割が大きく変わってきて「評価する基準」も多様化することでしょう。
そういう意味で、この本は1年間社会人を経験して評価されてきた「社会人2年生」におすすめしたいと思います。
今後、評価する側も経験することになるからです。
意外にも「野球」というフィールドから学ぶべきことはたくさんあるのです。