今回スリランカで1冊の本を持っていったのですが、面白くて5日で読了しました。
「半暮刻」という小説です。
あらすじとしては、2人の青年(翔太と海斗)が女性たちを騙し、罪を犯しました。
風俗あっせんの職安法違反で逮捕されます。
その結果、翔太は執行猶予なしの実刑、もう1人の海斗は不起訴との判決結果となります。
同じ罪を犯したのに、罪を償った者と罰を受けなかった者のその後のストーリーが展開され、最後に合流します。
最初この小説を読み進めたときは、まさかこのような展開になるとは思いませんでした。
特に海斗。
彼は自らの生まれながらのステータスを利用して、大手広告会社であるアドルーラー(電通をほうふつとさせる……)に入社します。
持ち前の器用さと要領の良さでトントン拍子に出世。
東京都と共同する「新都市博」という巨大イベントにアサインされ、さらに上を目指します。
彼の大きな特徴は、自分のような「できる人間」以外の人間は徹底的に見下すことです。
努力ができない人間や向上心のない人間に対して容赦ない……。
彼はエリート意識がとても強いわけですが、私も恥ずかしながらそのような時期がありました。
その後、自分の未熟さに直面して全力平謝りです。
イタイ目にあわないようにしましょう。
もちろん、海斗のような態度は人を遠ざけます。
自らの経験上、海斗に少し感情移入してしまうところもあったのです。
スリランカでも同じような政治的な問題があるようです。
現在の大統領はかなり専政的なようで、国民に重税を貸したり、汚職も多かったり。
この小説では、ヤクザと半グレと広告代理店社員である海斗が官製談合のため、事務所で打ち合わせの重ねているシーンが出てきます。
ヤクザ、半グレ、広告代理店社員。黒と灰と白。
この3者が密閉された狭い部屋で顔を突き合わせ、国民の税金を強奪するための手配を黙々と進めている。
なんという光景か。
くすんだ天井のあたりから自分たちを俯瞰してみると、世にも滑稽な図が拝めるだろうーそんなことを時折思った。しかもそれも疲労からくる妄想で、海斗はすぐに頭を振って作業に戻る。
これが本当だとしたら怖いけれども、やけに信憑性がある。
全く笑えないけど笑える。
そうだ、黒と灰と白。これこそが社会を表す三原色だ。
自分たちは間違いなくこの社会を構成する最も基本的な単位なのだ。
社会の三原色が「黒」と「白」と「灰」とは言い得て妙。
あと、「新都市博のあとの巨大イベントは「改憲」」という海外の上司盾原の言葉もしびれました。
日本の政治の闇の深さを感じます。
さしずめ、日本国家も灰色ということでしょうか。
実は私が1番印象に残ったのは最後のシーンです。
この小説の最後に、対極にある立場である海斗と翔太が言葉を交わします。
その時に翔太は海斗に向かってこのように問いかけます。
「海斗、お前、本は読むか」
一見、突拍子もないこの質問ですが、私はこれが1番重要な核心をつく質問だと思いました。
それに対して海斗はこのように答えます。
「あのね、僕はG大卒なんだ。少なくとも君の100倍は読んでるよ」
私は、この旅を通して、久々に小説をじっくり読みました。
帰国後も、小説を読み漁っています。
単純に読書が楽しくなったのですね。
読書は量だけではないはず。
自らにノルマを課すような功利的な読書体験から卒業できたのかもしれません。
今回(2024年6月)のスリランカ滞在日記を出版しました。
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