今回は「損したくないニッポン人」という本をご紹介します!
高橋秀実著「損したくないニッポン人 (講談社現代新書)」を読んで共感するところがありましたのでシェアします!
日本は賃金が上がらないのに物価が上がるという「スタグフレーション」という現象に近づきつつあります。
そんな中、家計を見直すべく「節約」をする人も増えていますよね。
著者の高橋さんが底値を求めてスーパーを何軒もはしごをした際にこのような実感があったといいます。
結局近場の底値で買うことになるのだろうが、いったんどこかに最安値が存在するということを知ってしまうと、それより高い値段で買ったという損した気分は拭えなくなる。
「損したくないニッポン人」より
「知らないと損する」とはお買い得情報の決まり文句だが、実際は「知ると損した気分になる」のである。情報は損しないために集めるものだが、実際に集めると損をする。
知れば知るほど驚きもなくなり喜びもなくなって損するわけで、情報は損の素ではないだろうか?
私たちは損をしないために情報を集めようとします。
たとえば株式投資を始めるときはいろいろな情報をかき集めますよね。
その情報をもとに株を買ったらいきなり下がることもよく生じます。
最安値は予知できないですからね。
買い物も株も最安値で買うことは至難のわざです。
よくチラシを比較しながら1円でも安いスーパーにいくために隣町まで行くという人がいますが、愚の骨頂です。
それは行動経済学で考えると火をみるより明らかです。
それでは、この現象を行動経済学で考えてみましょう。
人間の心理には「損失回避の原則」が働きます。
もし同じ金額だけ利益を得た場合と損失を被った場合、損失を受けたときのほうが心理的ダメージが大きいのです。そのため、人間は「利益を得る」よりも「損失を避ける」傾向にあります。
最安値を求めてスーパー巡りをして、もっと安い情報を入手したとしても損した気分になる。
得をするより損が大きいので、無駄な行為なんですよね。
さらに「機会費用」も考えなければなりません。
情報を集めれば集めるほど「まだ最安値ではない」と身構えて他の選択肢を検討しようとします。
これには「機会費用」が発生します。
つまり、最安値を検討するだけの時間を「儲ける機会」に充てれば損失を相殺できるだけのお金を稼げたはず。
まさしく「情報は損の素」なのです。
もう一つポイント制についても言及がありました。
趣味でポイントを追求する野口さんという方へのインタビューで、高橋さんは根本的な疑問を呈します。
ー野口さんは欲しいモノってあるんですか?
私は唐突にたずねた。欲しいモノがあるというよりもモノよりポイント、クレジットよりチャージ法という具合に、購買からどんどん後ずさりしているように見えたのである。「あらためてそう訊かれると、ない、ですね」
うつむきながら答える野口さん。ー欲しいモノがないんですか?
「損したくないニッポン人」より
期せずして問い詰めるような形になってしまったが、私自身も特に欲しいモノは何もないことに気がついた。必要なモノはあるが、それは欲しいモノではない。欲しいモノがあるから買うというのが経済学の常識だが、もしかすると人はモノを買おうとするからその理由や意義などが欲しくなるのではないだろうか。
私も経験があるのですが、ポイントのために買い物をすることがあります。
買い物が「ついで」になってしまうんです。主従が逆転していますよね。
このようにポイントを貯めるために買い物をしている人は結構多いと思います。
ポイントを導入している企業のマーケティング戦略にひっかかっているだけなのですが、
まずはこのような疑問を自分になげかけましょう。
ポイントを貯めて結局私は何が欲しいんだろう?
この疑問にうまく答えられないとき、ポイントのために浪費している可能性が大きいです。
自分が何を欲しているかを知る道は困難を極めますが、一度じっくり考えてみるべきですね。
その行為こそが「損したくないニッポン人」からの脱却につながるはずですから。