今回は「レゴはなぜ世界で愛され続けているのか」という本をご紹介!
私はこれまで「レゴ」というブランドを会社経営の視点から捉えたことがありませんでした。
レゴといえば「レゴブロック」などの有名商品を売り出していることは知っていました。
しかし、その背後に複雑なマーケティング的な「闇」を抱えていたことは全く知りませんでした。
この本を読み進めると、2003年の年明けあたりからレゴ帝国が崩壊し始めましたことがわかります。
「ドル安」や「クリスマス商戦の失敗」などの外圧的な失敗があったものの、もっとはるかな構造的な問題を抱えていたのです。
その要因をざっくり言うと、「経営陣の傲慢」と「財務面での無策」。
そして「焦りすぎ」という3つに分類されると思います。
改めて言うと「レゴ」は、老舗のブロック玩具メーカーとして高い知名度を誇っています。
しかし、その「高い知名度」の上にアグラをかいていると手痛いしっぺ返しをくらうことになるのです。
さて、レゴの経営陣の失策とは一体なんだったのでしょうか?
本書からひもといてみましょう。
レゴの経営陣は12人の上級副社長で構成され、その12人が6つの市場地域と直販事業やグローバルサプライチェーンなどの業務をそれぞれ監督していたが、クヌッドストープ(*次期CEO)によれば、この経営陣が「まるで機能していない」ことが最大の問題だった。
「まったく連携がありませんでした。それぞれが自分の担当範囲しか見ていませんでしたから」
「レゴはなぜ世界で愛され続けているのか」
これはいわゆる「大企業病」ですね。
経営陣が「木を見て森を見ず」状態だと莫大なる赤字企業が成り立ってしまうのです。
さらに、次の点も致命傷でしょう。
経営陣がリアルタイムの在庫やキャッシュフローを満足に理解できていないなか、クヌッドストープは過去10年間のレゴの業績を徹底的に検証した。検証に使ったのは、収益から機会費用を差し引いた値である経済付加価値(EVA)だった。
〜略〜
クヌッドストープの調査からはショッキングな事実が明らかになった。
「レゴはなぜ世界で愛され続けているのか」
レゴは1993年〜2002年の10年間、1998年を除き、毎年黒字を続けていたが、EVAでは同じ10年で16億ドルもの損失を出していた。言い換えるなら、株主はレゴの株より、ノーリスク・ローリターンの国債に投資していた方が儲かっていたということだ。
レゴを支えるために創業家の資産は10年間、毎日約50万ドルずつ失われていた。
これはショッキングな事実ですよね。
PL(損益計算書)では黒字が成り立っていても、実質的な付加価値を測定すると何と16億ドルもの赤字を被っていたのです。これは、ざっくり言うと「生産的な商品」を生み出していないということです。
財務諸表だけを見ていると、このようなイノベーション的感覚は把握できません。
経営陣は数字が読めることはもちろんですが、自社が「経済的な付加価値」を生み出しているかどうかを肌で感じられるセンスも求められるのです。
レゴの場合、経営陣に両方の感覚が欠如していたため、毎日50万ドルもの企業価値が毀損していったのです。
日本円で換算すると一日で6000万円ずつ企業価値が目減りしていく感じなのです。
数字が読めなくとも、自社が停滞している危機感は即座に感じ取る必要がありますね。
「レゴ」という老舗の有名メーカーは2003年に大きく経営状態が傾きました。
そして、その状態から立て直す際にまた大きな失敗をしてしまいます。
その失敗こそが私が参考にしないといけない要素なのです。
それは……「焦るな!」ということです。
以下3つの部分を引用します。
どんなイノベーションにも、それぞれにふさわしい進め方のペースがある。とくに製品開発の場合には、需要の増減に合わせなくてはならない。ムービーメーカーの場合ももっと時間をかけて、最初のセットを育ててから追加セットを売り出していたら、成功していた公算は高い。ところがペースを完全に誤った。矢継ぎ早にさまざまなセットを売り出して、市場に商品をあふれさせたことで、みずからシリーズの価値を下げてしまった。
「レゴはなぜ世界で愛され続けているのか」
幅広いイノベーションに挑戦するときは、段階的に取り組み、学びながら進むことで、リスクを小さくしなければいけない。レゴはそのことを忘れていた。
「レゴはなぜ世界で愛され続けているのか」
どのようなイノベーションの試みでも、「7つの真理」のイノベーション戦略を取り入れるときには、適切な順序とペースを考える必要がある。まずは自社の核となる部分と顧客から始めること。そして、急ぎすぎないこと。まったく新しい市場を開拓するためには、最初に中核事業を確立し、クヌッドスープの言葉を借りるなら、「やるべきことをやる」体制を築いておくことが前提となる。
「レゴはなぜ世界で愛され続けているのか」
このように本書では何度も「レゴのイノベーションは焦り急ぎすぎた」ことを強調しています。
この教訓は、私自身にも深く刺さるものがありました。
自分でビジネスをしたいと考えているとき、ずっと「焦り」を感じ続けていたのです。
そして、自分に適した「順序」と「ペース」を計画立てていませんでした。
でも当面は焦らずに、クヌッドストープCEOが言い残していたこの言葉を実行してみようと思います。
「やるべきことをやる」
焦らずにじっくりいきましょう。