いま、「カバチタレ」という行政書士の漫画を読んでおります。
じつは3周目!
気づいたのですが、行政書士を受験した後に読むと理解度が全くちがいます。
特に「行政手続法」と「行政不服審査法」はイメージがしにくいですよね。
今回は行政法の理解にめちゃくちゃ役立つ「カバチタレ(17巻)」をご紹介します。
ざっくりとしたあらすじはこのような感じです。
「原口自動車」は元請けである「カンバツタクシー」から日常的に手ぬき車検を強要されていた。
立腹した原口社長は中国運輸局長へ元請けの不当な慣習について告発を行う。
その結果、行政庁は逆に告発した原口自動車に対して許認可停止の行政処分を行ってしまったのだ。
なんだかビ●グ●ーターを彷彿とさせるストーリーやね。
17巻から行政書士・社労士の金田さんは「もみじ行政書士事務所」の所長代行として勤務することになりました。ところが、いきなり「行政処分」に対する審査不服申立て案件を受託します。慣れない仕事に悪戦苦闘!
そこで、金田さんが説明した「行政処分に不服があるときの対処法」がつぎの2つです。
①行政手続法に基づく「聴聞」
②行政不服審査法に基づく「審査請求」
ざっくりとした図を書くとこうなります。
まず、ファーストステージは「聴聞」。
役所が処分をくだす前に、名あて人は弁明できるチャンスをもらえます。
これが「聴聞」。直接、行政庁(処分庁)を相手にするのがポイントです。
ところが、聴聞を経ても処分が下された場合はセカンドステージに突入します。
「その処分を取り消してくれ」と上司にあたる「上級行政庁」に争うことになります。それが「審査請求」。
通常は審査請求は「書面」で審理を行いますが、今回は金田さんが「口頭」での審理を申し出しました。
これもいい戦略!
「聴聞」で手ぬきしたことを悔いているところもリアルだわ。
さて、審査請求に踏み切った金田さんは3つの対策を検討します。
この3つの方法を理解することが重要!
思わず「六法」を片手に漫画を読んでいましたので以下で説明します。
先述したように、原則的に審査請求は書面でやり取りをしますが、「聴聞」と同様に口頭での意見陳述の場を設けることもできるのです。
以下の行政不服審査法20条が根拠になります。
【口頭による審査請求】行政不服審査法20条
口頭で審査請求をする場合には、前条第2項から第5項までに規定する事項を陳述しなければならない。
この場合において、陳述を受けた行政庁は、この陳述の内容を録取し、これを陳述人に読み聞かせて誤りのないことを確認しなければならない。
さらに、「執行停止」です。これこそが行政書士のなせるテクニック!
審査請求と同時に行政処分の執行停止の申し立てをするのです。
行政不服審査法第25条が根拠となります。
今回は「絶対的」執行停止ではなく「必要的」執行停止なので、第2項に当てはまると思います。
【執行停止】行政不服審査法第25条
2 処分庁の上級行政庁または処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申し立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部または一部の停止その他の措置(以下「執行停止」と言う。)をとることができる。
「行政不服審査法」と「行政事件訴訟法」の執行停止の条文も比較しておきましょう。ともに25条です。
さらにさらに!
審査請求と同時に行政事件訴訟法に基づく取消訴訟もできます。
行政処分は、審査請求ができる場合であっても、いきなり取消訴訟を提起できることを原則としています(自由選択主義)。行政事件訴訟法8条に規定があります。
行政事件訴訟法8条
処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する採決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りではない。
金田さんはこの3つの戦略を用意したのですね。
これらは「5択問題」でも「記述問題」でも重要論点です。
このように、カバチタレは行政書士学習のイメージをするだけでなく、記述式の問題にも役立ちます。
いろいろ具体的な課題シーンがあり対応策を考えさせられる「ケーススタディー」学習ができるのです。
行政書士受験生は、行政法の全体像を把握するために「カバチタレ(17巻)」を2回ほど読むことをおすすめします!
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