今回は「狭小邸宅」という小説をご紹介します!
今回紹介する「狭小邸宅」は住宅営業サラリーマンのストーリーです。
「営業力」というスキルを深く考えさせられました。
小説から「営業力」を磨きましょう。
第36回すばる文学賞を受賞したこの作品。
この本では、主人公である松尾のすさまじい社畜ぶりが描かれています。
僕はその描写が好きで声を出して笑ってしまったくらいです。
「そっちはどうなの。まさかの不動産営業マンは。ゴリゴリの営業なんだろ」
売ったり売れなかったりといってお茶を濁そうとしたが、見栄を張る必要などないと思い直した。
「仕事も大変だけどとにかく眠い。毎日7時半出社で帰りは終電すぎ。今日みたいな水曜日は早めに帰れるけどそれでも疲れが全く抜けない。一万払ってもいいからもう1時間寝たいよ。」
〜略〜
「車で一日中営業するんだけど、客がいるときはどうにかなる。でも、客が降りた途端、赤信号の度に気絶して、その度にクラクションで起こされる。眠いのだけは本当にどうにもならない。」
「狭小邸宅」より
うわー、ゴリゴリすぎる!
1時間の睡眠時間を1万円で買ってもいいという発想や「赤信号の度に気絶」はそれこそ赤信号。
でも、実際に同じような労働環境に身をさらしているサラリーマンも多いと思います。
私もここまではひどくなかったですが、1時間の睡眠時間を1万円で買いたい時期もありました。
このような社畜状態の中、松尾はある上司の一言で覚醒します。
以下は、松尾と課長が一緒に外回りをしているシーンですが、この上司が「営業の神髄」を教えてくれるのです。
「何で自分が売れないか真剣に考えたことがあるか」
考えたことがないわけではなかった。ただ、動機の弱さや自分の資質ばかりがいつも目につき、それ以上突っ込んで考えてこなかったように思う。
「同行して少しわかった。お前はやはり営業マンには向いてないかもしれない。だが、向いているいない以前に、営業マンとしてやるべきことがやれていない。
「狭小邸宅」より
今日、お前は246を平気で使った。普通、幹線道路はなるべく避けて走る。混雑するのがわかりきっているからだ。客を待たせるとその分だけ熱が冷める、現実に戻る。それだけじゃない、路地を使えば客から信頼される。誰でも知っている国道とそうでない路地を走ったら、客はどちらが街に詳しいと思う?
お前が客だとしたら、街を知らない人間がいい物件を知ってると思うか。お前はそういう小さいことを重要だと思わないのかもしれない。だが、売っている営業マンで道路が頭に入っていない奴はいない。
皆覚えてる、俺も覚えた。お前だけだ、頭に入ってないのは。」
「営業」という仕事はかくも奥深いものです。
私は「営業」という仕事を単純化しすぎていたのかもしれません。
「営業向き」とか「営業不向き」の2択でしか捉えていなかったのです。
「僕は人見知りだから営業は向いていないわ」という表面だけをなぞってはいけないのです。
松尾は課長の言葉を通じて、「モノを売る」姿勢を覚えていくことになりました。
すると、主人公は変化しました。
ドラスティックに変化したのです。
この小説では不動産営業が舞台となっています。
これから不動産業界に参入しようとする私にとって、ダイレクトに勉強になる内容でした。
私には今まで俗に言う「営業」の経験がありません。
6年ほど前から、自分の作品などをどのように広めればいいかという方法論を勉強し始めました。
そこではやはり「営業力」が必要となるのです。
会社員としての「営業力」とは少し違うかもしれませんが、基本的なスタンスは一緒です。
そこで、これから営業力を磨くためにはどうすればいいでしょうか?
そこで、「狭小邸宅」の松田の気づきが参考になります。
松田は「自分がなぜ売れない営業マンだったか」その理由に気付くのです。
「えっと、どうすればいいんですか」
普段は責任ある仕事をこなし、難しい判断を下しているに違いない半田さん(お客さん)が子供のような質問をする。当惑した顔でこちらを見ていた。
僕は、満面の笑みを浮かべて、「買いましょう」と言った。
この一言が言えなかった。検討して下さい、とかお願いしますとか、核心を避け、婉曲的な表現で濁してしまう。全く売れない営業マンが口にする言い回しを使ってばかりいた。客に対してはっきりものを言うことが何となく悪いような気がしていた。
「狭小邸宅」より
どの仕事もそうかもしれませんが、一度「自信」をつけると、「実績」がついてきます。
そして、「実績」がつくとますます「自信」がついてきます。
そうなると、仕事の「ポジティブサイクル」が出来上がるのです。
「実績が先か自信が先か」という問題がありますが、とにかく「自信」がなければものは売れません。
「買いましょう」という一言がいえるかどうか。
その一言が言えるまで修行するべきですね。