今回は「ザ・ニューリッチ」という本をご紹介します!
ぼくのライフワークの一つは「お金」について研究することです。
もっといえば、お金についての執着を取っ払うことにあると言えます。
今回は、お金持ちの生態について考えてみます。
ロバート・フランクの著書「ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態」を読むと近年の富裕層の様相が違ってきていることを感じます。
一言で言うと、「ハードワーカー」なのです。
アーリーリタイヤするだけの資産を獲得したのに、めちゃくちゃ働いているのです。
例を挙げてみましょう。
まずミニチュアハウスで事業を成し、「デパートメント56」という企業を設立したエド。
この頃になるとエドはすべてに疲れを感じるようになった。
「ザ・ニューリッチ」より
なにしろ週7日、1日18時間働き、生活の大部分を飛行機の機内で過していた。
顧客にさえ嫌気がさしてきた。彼はデパートメント56への熱烈なファンレターを何千通も読んだ挙げ句、「目を覚ませ」というゴム印をつくらせた。とりわけ感情のこもった手紙には、この判を押して顧客サービス部門に回した。
言うまでもありませんが、エドはもはや一財産を築いています。
それなのに1日18時間労働、気合いの入ったゴム印。
彼はもはや金のために働いているのではありません。
ワーカホリックと化しているのですが、何が彼を突き動かしているのでしょうか?
次に、飛び級で16歳にしてプリンストン大学へ進学したジャレド・ポリス。
彼は友人2人でインターネット接続会社を設立します。
ポリスもまたすごい。
ストレスに悩むことはほとんどない。
「ザ・ニューリッチ」より
「ストレスを感じるのは非生産的。非生産的なことは避けているんだ」
余暇にさえ、成果を追い求める。家で映画を見るときもノートパソコンで電子メールを書き送っている。
「映画を見ながらの生産性はせいぜい25%くらいだろう。それでもけっこう仕事ははかどるよ」
彼は映画を見ながらでも仕事をしているのです。
余暇と仕事の境界線がない状態となっています。
さらにこう続きます。
読書はたいてい、シャワーを浴びながらする。
「ザ・ニューリッチ」より
「シャワーは30分間浴びる。けっこう長いんだ。どのページも濡れてしまうから、自宅で読んだ本は後から見ればすぐわかる。膨れて開いてしまっているからね。」
彼は金持ちなのにここまで徹底して時間効率を気にするのはなぜでしょうか?
上記2人の事例をみますと、資産を築いたにもかかわらず仕事に邁進する新富裕層の姿が見られます。
最近はアーリーリタイヤやFIRE(経済的自立)などを実現した人が日本でも増えましたが、彼らの言動を観察すると意外にも「日常がつまらない」ことを吐露しているケースが多いのです。
私見ですが、資産がある状態というのはもはや幸福ではないのです。
向上心が途絶えてしまうという状態になると、とたんに人生がつまらなくなるものです。
エドやポリスのようにお金があっても仕事をするのはなぜか?
一つには、もはや仕事がお金を得る手段ではないからでしょう。
また、最近の富裕層は財産をなして終わりではなく、財産というストックではなくフローも積極的に増やそうとしています。
そのため金持ちになっても貪欲に働いているし、しかるべきコミュニティにも属しています。
一般的に財産を築くことは目標になりがちですが、もはや目指すべきは「お金」ではないのですね。
いや、むしろお金が人生の邪魔をしているケースもあります。
フランクはこう述べています。
お金があれば人生は楽になると思うのは大間違いで、お金はリッチスタン人(新富裕層)の生活をかえって複雑なものにしている。
「ザ・ニューリッチ」より
リッチスタン人はまた他のリッチスタン人との競争にうんざりしている。どんなにいい暮らしをしていても上には上がいるものだ。
よくあるのが「マウンティング」です。
他人と比較して、自分のほうが優っていることを確認して優越感に浸る。
これは人間の性でもあり、根源的な性質なので仕方ないのでしょう。
お金がなければ苦しいけれど、お金が十分あるからといって幸福という訳ではありません。
金持ちの悩みは贅沢かもしれませんが、案外ぼくたち庶民よりもっと深い闇があるのかもしれませんね。